不妊治療を始める時の不安

結婚をして家庭を築く上で、子供を望むことはとても自然な気持ちです。
妊活を始めてすぐの頃は、「来月には子供が出来て、もうこんなお洒落なお店には来られないかもね。」なんて笑い合っていたはずなのに、3ヶ月、半年、1年、2年…どれだけ待てど暮らせどなかなか子宝に恵まれず、病院に通うことを検討し始める方も多いのではないでしょうか。
しかし、巷で大変だと言われる不妊治療を本格的に始めるに当たり、本当に今の自分たちの生活を守りながら取り組んでいくことができるのだろうかと、不安を感じることだと思います。
ここでは、私自身の不妊治療の経験をもとに、多くの人が感じるであろう不安に対し、実際のところどうなのかをまとめます。

不妊治療って?

まず始めに、不妊治療とは具体的にどんな治療を行うのかを知りましょう。
不妊治療には段階があり、一般的には患者に必要最低限な出来るだけ自然に近い治療から始めて、効果が見込めない場合に、より高度な治療へとステップアップしていくことが多いです。

一般的な不妊治療

不妊治療には、より自然妊娠に近いものから、高度な医療技術が必要な治療まで段階があります。

  • タイミング療法
    病院の内診で卵胞の発育状況を確認しながら排卵の時期を予測し、排卵のタイミングに合わせて、自分たちで性交のタイミングをとる治療。時に、排卵を促す薬を処方されることもあるが、限りなく自然妊娠に近い治療。
  • 人工授精
    自分で採取した男性の精子を、清浄・調整した後、排卵のタイミングに合わせてカテーテルで子宮内に注入する治療。例えば子宮頚管の粘液分泌が少なかったり、形状が原因でうまく精子が卵子までたどりつけないような状況にある方に効果的な治療です。
人工授精
人工授精イメージ図
  • 体外受精
    卵巣に針を刺し採卵した成熟卵と、清浄・調整した採取した男性の精子を同じシャーレに入れ、自然に受精するのを待ちます。無事に受精した場合、その受精卵を子宮に戻す治療です。
    受精卵は受精してすぐに子宮に戻す場合と、培養液の中で培養して着床しやすい状態にしてから戻す場合があります。また、必要に応じて受精卵を凍結し、子宮の状態を整えてから戻す場合もあります。
    一度、卵子と精子を体外に取り出していることから、人工授精と比較すると高度な医療技術が介入する治療と言えるでしょう。
体外受精
体外受精イメージ図
  • 顕微授精
    体外受精でも妊娠しなかった場合にステップアップすることが多いです。
    採卵した成熟卵に、運動率や形状が優れていると判断された精子を注射器で注入して受精を促す治療です。
    体外受精と同じく、子宮に戻すタイミングは様々で、必要に応じて凍結されることもよくあります。
顕微受精
顕微授精イメージ図

その他の不妊治療

上記の治療の他にも、男性の精巣から精子を採取する治療など、様々な治療があります。
患者一人一人に合わせた治療を医者と二人三脚で試行錯誤していく、長い道のりとなります。

不妊治療を始める時の不安

不妊治療を始める時、様々な不安があると思いますが、その中でも多くの人が抱えるであろう不安を見ていきましょう。

1.経済的な不安

多くの方がまず不安に感じるのは、金銭的に今の自分たちの生活水準を維持しながら、治療をすることが可能なのかという点ではないでしょうか。
ネットで調べれば、大まかな金額は何となくつかめますが、ここでは私が治療で実際にかかった費用を1回あたりの通院ごとに詳細に公開します。
タイミング療法については、保険が効く治療が多いため、ここでは費用が高額になりがちな人工授精以降の高度治療についてご紹介したいと思います。

人工授精の治療費

人工授精でかかる費用は主に、卵胞の発育確認の際に行う内診の費用・処方薬料・人工授精の処置費用です。このうち、卵胞がなかなか予想した通り順調に育たなかったりすると、通院回数が増えて、費用はその回数に応じて多少増えることとなります。また、薬の量も個人に合わせて処方されるので、必要ない場合と多量に必要な場合では費用は変わってくると思います。
あくまで、個人の1ケースだということをご理解いただいた上で、下に私の治療でかかった費用を記載致します。

私が通っていた病院は、都内でおそらく標準的な費用だったと思います。
何度か人工授精を行いましたが、上記のケースは順調に進んだ場合の治療費です。
卵胞の発育がうまくいかなかった時は、3行目の内診のための通院があと何回か追加になるようなイメージです。

体外受精の費用

体外受精の治療は、人工授精に比べると長期戦になることが多いです。
1度の体外受精(受精卵を子宮に戻すまで)にかかる期間は病院の方針によって大きく違います。
期間が長くかかるほど、その間に通院する回数も多く、薬の服用も多い傾向になると思います。
私が通院していた病院ではかなり長い期間をかけて1度の体外受精を行います。なんと、初診から移植までの期間は、約4か月!
また、受精卵を凍結するかどうかによっても費用が変わってくると思います。
以下の私のケースは、長期戦でかつ、凍結卵を移植したケースです。

やはり、人工授精と比較すると、費用も跳ね上がります。
ただし、私は都内在住ですが体外受精や顕微授精は東京都の不妊治療助成の対象となっていますので、条件を満たせば、助成金を受けることができます。今は多くの自治体や企業で不妊助成を行うところが多いようなので、是非ご自身のお住まいの自治体や勤務先の制度を一度ご確認下さい。

顕微授精の費用

顕微授精と体外受精はそれほど金額的な差は大きくないと思いますが、病院によって様々です。
私は体外受精を受けた後、都内で不妊治療の最後の砦と言われる病院に転院しました。
その病院では、あまり薬を使用しない方針だったこともあり、治療期間も約1か月と非常にスピーディーな治療を受けることができました。そのため、他の病院と比べると通院自体が少なく、その分費用も抑えめになっているかもしれません。
その際の治療費用を下に記載します。

顕微授精の場合、体外受精と同じように助成制度がある自治体や企業が多いようですのでご確認下さい。

2.時間的な不安

次に気になるのは、治療にどれくらいの時間を割かなくてはならないか、という点ではないでしょうか。
特にお仕事をされている方は、仕事と治療の両立が可能なのか、不安になると思います。
ここでは、私が1回あたりの治療で通院した回数についてご紹介したいと思います。

人工授精の通院

人工授精は、排卵タイミングに合わせて治療を行う必要があり、卵胞の発育状況によって通院回数は多少変わってくるかと思いますが、私のケースは順調に発育した場合ととらえて下さい。

人工授精を行った後に、一度内診が入っている(最後の行)のは、着床を促す注射を打つためです。
どうしても通院を最低限でおさえたい方は、医師に相談して省くことも可能かもしれません。

体外受精・顕微授精の通院

費用の説明の中でも記載しましたが、体外受精以降の治療は、病院の方針によって、1回の治療にかかる期間が大きく異なります。
私が最初に通っていたA病院では、1回の体外受精を終えるのに約4か月を要しました。
その後、転院した治療ペースの早いB病院では、約1か月で完了したのです。
もちろんそれぞれのメリットとデメリットがあります。
たっぷり時間をかけるA病院のメリットは、しっかりと薬を使って管理することで、多くの成熟卵を育てます。そのため、1度の採卵で沢山の卵子が採れるので、余った卵子は凍結保存し、その後の移植のチャンスを増やすことが出来るのです。一方でデメリットとしては、1回目の体外受精の期間が非常に長くなること、薬を沢山使用するので、身体的な負担が大きいということです。また、その分通院回数も多くなることになります。
B病院のメリットは、少しでも早く妊娠を望む方にとって、スピーディーに治療を進めることができることです。また、薬をあまり使用せず、出来るだけ自然妊娠に近い形で排卵を起こすので、身体的負担が少なく済みます。そして、通院回数は少なく済むことも、時間を取られたくない方には大切なポイントです。
一方、デメリットとしては、1回の採卵でとれる数が少ない(時には1つということもある)ので、移植の度につらい採卵を受けねばならないことです。

では、A病院とB病院について通院履歴をご紹介します。
通院回数という面では、体外受精と顕微授精にほぼ違いはありませんので、まとめてご紹介します。

A病院の通院履歴
B病院の通院履歴

A病院では生理後の初受診~妊娠判定まで計11回。B病院は計8回。

これらの病院についてもっと知りたい方は、他の記事では病院名やより詳細な治療内容などもご紹介していますので、ご確認ください。

3.心身への負担への不安

治療を始めたいが、身体に負担をかけたくない、痛い思いはしたくないという方もいるでしょう。
不妊治療には多くの場合、薬を使用しますので、身体的負担は大きいと思います。実際、私も薬を服用したり注射を打たねばならない時期には、肌荒れや体調不良など様々な症状が現れました。
また、婦人科の通常の内診でも不快なのに、卵巣に針を刺して卵子を採取したりするわけですから、想像以上に痛い思いを沢山することとなります。
それらの身体的苦痛に加え、思い通りに結果が出なかった場合、心的負担も相当なものになります。辛い通院へのストレス、いつまで続くかわからない不安、仕事への影響など、数えきれない不安があります。

不妊治療を行っている病院が数多くある中で、病院によって治療方針は本当に様々です。
薬をほとんど使わない病院もありますし、採卵の時には麻酔を行ってくれる病院もあります。
また、不妊治療にともなう心的ケアを行ってくれるような病院もあります。
自分の希望と病院の治療方針にズレが生じないためにも、通院を始める際には病院のホームページや実際に通った方の経験談など、よく調べてから決断されることをお勧めします。

4.夫婦関係への不安

これまで良好な夫婦関係を築いてきた。だからこそ、この人との子供が欲しいと思って不妊治療を始めたはずなのに、治療が原因で最近どうも喧嘩が増えた、夫婦関係がギクシャクし始めたなどの話はよく耳にします。

私が経験して感じることは、不妊治療は通院や身体的負担などを、圧倒的に女性がえ負うことになりますが、妊娠という同じゴールを目指して戦うという意味では、夫婦どちらも同じモチベーションで取り組まねばならないと思うのです。
もし夫が、自分は採卵の時だけ病院に行って精子だけ提供していればいいんだろうなんて軽い気持ちで治療を始めてしまうと、まるで他人事のようなその態度に妻の不満は膨らむばかりです。

不妊治療という長く辛い戦いは、妻一人の頑張りだけで乗り越えることはできません。夫婦が同じ熱意をもって二人三脚でその戦いに挑まなければ、きっとどこかで挫折してしまいます。
まずは、治療を始める前にお互いの気持ちをしっかり話し合って、同じ方向を向いて治療をスタートできるように決意を固めておくことが、今後の自分たちを支えてくれる強固な土台となることと思います。

最後に

不妊治療を始める前は、わからないことばかりで不安な気持ちでいっぱいになると思います。
また、治療を開始してからも多くの壁が立ちはだかることだと思います。
しかし、それらを夫婦2人で乗り越えて、待ちに待った赤ちゃんを妊娠できた時、治療の苦労を全て吹き飛ばしてくれるような、幸せなマタニティーライフと、以前にも増した夫婦の絆を手にすることがきっと出来ると思います。

夫婦のプロフィール